12月も半ばが近づき、段々とクリスマスの雰囲気を感じるようになりました。
この季節になると、今年はひとりぼっちのクリスマスにならないようにと、
独り身の方にとっては人恋しい気持ちにもなります。
長くレセプト請求をされている方はご存知かもしれませんが、
10年以上前は「後期高齢者制度」というものがなく、
医療費の保険証は普通の国民健康保険証に加えて、
番号のアタマが27から始まる「老人医療制度」の保険証だった時代がありました。
なので、27(にーなな)の保険証などと略すことがありました。
当時29歳の僕は、クリスマスの時期には
室蘭では病棟のひとりぼっちさん焼き鳥パーティーに出席し、
洞爺村では、年明けに婚約予定の看護師さん夫婦が運転する車で、
運転席と助手席の間の後部座席に乗せてもらい、
3人でルスツスキー場のナイターに連れて行ってもらったり、
札幌に引っ越ししても相変わらずひとりぼっちで、
独り身を謳歌しておりました。
そんなクリスマスイブの夜に、とある女性から電話で告白を受けました。
27の女性からの毎晩のラブコールです。
こういう話の流れではたぶん想像がおつきだと思います。
27歳の女性ならばまた事情は異なりますが、
今年のクリスマスは27(にーなな)の女性からです。
慢性関節リウマチという病気は、
患者さんご本人が病気に苛まれるだけでなく、
患者さんの周りのご家族や医療者、施設の方も対応に苦慮することがあります。
様々な症状が出現し、
季節や時間によっても症状は変化し、
様々な薬を飲まれる方が多く、
それでいて、症状を改善させることが難しく、
また抑うつ的な症状も強く表れることが多くあります。
今は36度5分、PL顆粒を一包飲んだ。でも効かない。
1時間後に36度6分、もう一度PL顆粒を飲んだ。もう一包飲みたいが先生はどう思うか。
深夜23:25過ぎに看護師さんから電話。耳の一番奥のところと顎の関節が時々に痛いような感じと、それが頭に響くような気がする。
看護師では対応しきれないので先生から電話してください。
本人に電話します。体温は36.4度もある。普段は35度台の時もあるのに熱があるような気がする。
夜が眠れないのでメイラックスを飲んだが、それでも眠れないのでもう1錠飲みたい。
でも飲んだら頭の響きが強くなりそうな気がするので怖いが先生飲んでも良いですか。
早朝4:30過ぎにまた看護師さんから電話。本人が頭痛がするので今すぐ救急車を呼ぶと不穏になっている。
バイタルサインは問題ないのだが自分たちでは対処に困るので先生から電話して説明してください。
電話をしてみると、昔にお医者さんからどうして早く受診しなかったのか問い詰められたことがあるので今すぐに受診しなければなりません。
今すぐに受診する必要性はなく、しっかりと横になり安静を保つことが一番に大切です。
翌朝のモーニングコールは、メイラックスを3回飲んだら落ち着いたが昼も眠たかった。
前の夜はピーマンの肉詰め焼きを食べたことと、近しい方がなくなったこともありいろいろと不安が重なっていました。
先生はピーマンの詰め焼きはどう思いますか。
僕もたまにスーパーで割引していたら買って食べます。
夜19:30にお電話。この数日間に鼻血がでることが多く、体がぼーっとする。
熱はそんなに36.7分くらいが関の山だが、なんだかからだがこわかったりする。どうすればよいのか相談したい。
このふらーふらーっとした感覚と、鼻血とは関係があるのか心配になる。
また隣の部屋のおじいちゃんが夜に起きているので気になってどうしようもない。この人に同じ薬を出しているのか教えてください。
夜20時過ぎの夜のお電話。娘が一人で雇われて夜の居酒屋のアルバイトを始めました。
先のことや娘の健康のことが気になり夜が眠れないのが一番つらいです。
体温は36.8度でカロナールを内服したいのだがこんなに薬を内服してよいものかと30分以上をかけて延々と悩みと体調の相談を受けました。
24時間離れることなく、ふたりきりのクリスマスの夜を過ごします。
いつのまにか保険証はひとつになり、アタマの番号は39(さんきゅー)になりました。
その27(にーなな)のおばあちゃんは忘れられない患者さんのおひとりですが、
だんだんとリウマチの病状が進み、貧血も進行し、
初めてお会いしてから10年後の11月に、施設で看取らせて頂きました。
10年以上お付き合いをしましたから、それは想う気持ちもあります。
最近なんだか、
27の女性にも39の女性にも見向きもされなくなってしまいました。
ただ自分自身が擦れてきてしまって、
そういう風なお付き合いをしようとしなくなってしまっただけのかもしれません。
当時の自分は29歳でしたが今は42歳です。
27歳の女性には相手にしてもらえませんが、
39歳の素敵な女性にならばまだ相手をしてもらえる余地があるかもしれません。
というか、当時27歳の女性は今は39歳です。
クリスマスイブには毎年、浮気を繰り返しているので、妻にはただただ謝るしかありません。